「孫子」の読み方⑬・⑪九地篇・山本 七平
⑪九地篇 部下のやる気を引き出す
心理的環境編と理解している。
軍を運用するのには九種類の地に応じた運用がある。1)散地:諸侯が自国領内で戦う場合、その戦場になる地。(戦わない)
2)軽地:他国に進攻しても余り深入りしていない地。(駐留しない)
3)争地:彼我双方にとって奪取すれば有利な地。(攻めない)
4)交地:彼我双方いずれも進攻可能な地。(連絡を密にする)
5)衢地:諸侯の領地が隣接している地で、先に押さえた者が周囲の衆望を集めうる地。(隣国と友好関係を結ぶ)
6)重地:他領に深く進攻し敵の城が背後にあるような地。(補給がままならないので現地調達する)
7)圮地:山林や沼沢があり、行軍が困難地。(早やかに通過する)
8)囲地:進攻はあい路で帰路が大きく迂回しなければならない地。(早やかに脱出する)
9)死地:速やかに勇戦しなければ必ず敗滅させられる地。(死に物狂いで戦う)
昔の『用兵の名人』 は、敵軍の前線と後方の連絡を遮断し、大小の部隊を連携させず、将と兵が一体感を持たないようにして、上下の指揮系統を混乱させ、兵卒をバラバラにして終結させず、終結しても統一指揮が出来ないようにして、有利な時には行動し、不利な時は行動しない。
しかしどうやってそれをするのか?
著者の実体験がある。ゲリラに通信を切断され手からの話がある。
苦労してダメになった例だ!
敵の大軍が攻撃してきた場合の対処方法。
相手の思い及ばざる点に乗じ、思いもよらぬ方法で、警戒していないところを急襲する。
これは 『長篠の戦い』 の酒井忠次の、鳶巣塁の奪取を例としてあげている。
敵国に侵入する軍の兵。
敵地に深く侵入すれば、心は戦いに専念する。
沃野を略奪するので食料は不足しない。
休養させて疲労させない。気力を蓄えて兵を運用する。
敵に計り知れない巧妙な謀略ををなす。
戦う以外に方法の無いところへ兵力を投入すれば、死んでも逃げないが、死ねばおしまいなので全力をふるって戦う。
兵を戦うよりほかに方法のない環境に置くと、命を惜しまぬ勇士になる。
故に用兵の巧みな者は、皆を一致協力させ、一つにして、一人の人間を使う様に自由に使う。
将軍の務めは、静かに思いを秘め厳正で適切に処理されねばならない。
作戦計画は知られないようにする。
駐留地を変え、道は迂回して分からないようにする。攻撃は高所に登って梯子をはずすようにして、他国に侵攻したら船を焼き、引くに引けない状態にするし、羊の群れを追い立てるようにする。
兵は勢いに乗せられて東西に奔走し、どこへ行くのかを知らず、指揮官の意のままに動く。
三軍を集めて、このようにきびしい環境に置く。
これを将軍の務めという!
これは毛利元就の、厳島の合戦が例に出される。
勝つには勝つだけの、負けるには負ける事情がある例である。
改めて毛利元就の謀略が凄まじいか、よく分かる。
賞罰の法を無視した賞罰を行い、軍政を無視した命令をかかげ、三軍をいつわって一人を使用するように団結させる。
三軍をいつわる時には説明抜きで任務を与え、言葉で知らせてはいけない。
利になる事を知らせても害になる事は知らせない。
軍が敗亡する環境に見せかけて、必死の戦闘をさせて軍を生存させ、そのままでは死滅するよう環境に見せかけて、必死の戦闘をさせて軍を生存させる。
軍とは生きるか死ぬかの瀬戸際に来て、はじめて勝敗の主導権を握うるものである!
戦争遂行の原則はひたすらに敵の意向に従いつつ、敵の意図を明らかにすることである。
もし敵につけいる隙があれば、その虚に乗じ、最重要地点を奪い、味方の行動の時期をさとらせず、敵の行動に随従している様に行動し、戦機をみて一気に勝敗を決する。
『始めは処女の如し』 で油断させ、隙を見て 『後には脱兎の如し』 で不意に急襲する。
九地篇は長く感じた。記述も長くなった!
それに人間観察学の様な感じを受けた。
« 「孫子」の読み方⑫・⑩地形篇・山本 七平 | トップページ | 「孫子」の読み方⑭・⑫火攻篇・山本 七平 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 本・零戦 その誕生と栄光の記録(2012/12)・堀越 二郎(2016.04.23)
- 本・韓国人がタブーにする韓国経済の真実(2011/6)三橋貴明・室谷克実(2016.04.22)
- 三橋貴明の、「大マスコミ 疑惑の報道」を読んで……… 万華鏡写輪眼の瞳術「別天神」(2016.04.21)
- 本・愚韓新論(2014/2)三橋貴明(2016.04.20)
- 本・物語 イランの歴史 誇り高きペルシアの系譜・宮田律(2016.04.19)
「名言格言」カテゴリの記事
- 本・交渉術 (2011/6)・佐藤 優(2016.04.10)
- 仕事でのトラブル……… 「泣く子と地頭には勝てぬ」(2016.03.10)
- 本・「ズルさ」のすすめ(2014/12)佐藤 優(2016.02.11)
- 本・お金に強くなる生き方 (2015/10)・佐藤 優(2016.02.02)
- 本・人に強くなる極意(2013/10)・佐藤 優(2015.10.20)
「山本五十六」カテゴリの記事
- 本・零戦 その誕生と栄光の記録(2012/12)・堀越 二郎(2016.04.23)
- 戦闘機・紫電改 引き上げられた紫電改を巡る物語 「撃墜 3人のパイロット」(2016.04.21)
- 映画・ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015.10.25)
- 本・第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち(2013/8)⑤太平洋・ポール・ケネディ(2015.10.01)
- 本・第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち(2013/8)④ノルマンディー・ポール・ケネディ(2015.10.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント