本・日本異譚太平記(1999/11)・戸部新十郎
南北朝時代その混乱と猥雑さは、現代の混沌まで連綿と受け継がれている。楠木正成、足利尊氏、新田義貞・・・。悪党、山伏、天狗、鬼、婆沙羅大名等々、動乱の世をくぐり抜けた異才たちの生き様を、時代小説の第一人者が活写する。
何度も言っているが、著者の大ファンである。
文体が好きである。
この本は物語ではない。
太平記がどのような時代だったのか?
そうして武将たちが、個々に記述される。
司馬遼太郎の日野富子を扱った本がある。
題名は『妖怪』
この時代はそう言う時代だったと思わせる。
鬼、天狗、山伏・・・・・・
妖怪たちがうごめく!
百鬼夜行・・・・・・・
天皇みずから乱交パーティーを主催する?
密談もあったもんじゃない。味方に引き入れるのに女を使っている?????
怪しげな話が一杯ある。
そう言う時代の説明から入って行く。
太平記は面白いと言う。
が権力争いなのに、それだけではないのが問題である。
天皇親政を意図する後醍醐天皇。
天皇に兵力があるわけではない。
実際に戦うのは武士である。
この武士たちも天皇についているのは、天皇親政を望んでいるわけではない。
自分たちの領土が守られれば、増えればよいと思っている。
その為にどちらについた方が有利なのか?
そう言う目で書いてくれればよいのに、皇国史観が入って来る。
勝てば官軍ではないが、勝った時に天皇側は不公平な恩賞の分け方をしたようだ。
楠正成、正行なんかは珍しいタイプである。
評価される価値は十二分にあるが、それだけである。
それより楠正儀が面白い。
楠正成の籠城がある。
攻めて来る北条の兵に糞尿、熱湯をかけるとある。
糞尿はともかく、熱湯は水と大釜と薪が必要である。
大体が山城である。
水と薪はどうしたのか?
佐々木道誉、高師直、足利直義・・・・・・
新田義貞も可哀想!
常に足利尊氏の下風になる。
鎌倉攻めも義貞の力ではなかったのか?
無かったようだ!
勝てば歴史は味方する。
源義家の文、『われの七代の孫に生まれ変わりて天下を取るべし』
七代目家時、『わが命を縮め、三代のうちに天下を取らしめ給え』
それが尊氏になる。
そんな都合の良い話は無い!
天皇側には大義名分があるのだろうが、理解できない!
天皇親政で何が変わるのか?
天皇の廻りの臣下が潤うだけなのか?
南北朝のどちらが正当なのか?
どちらも天皇家である。
天皇家の内部争いに、外野がとやかく言うべきではない!
天皇家もしょっちゅう継ぐのは誰かで揉めている。
南北朝なんて大した問題でないのでは?
『怒られそう・・・・・』
最後の方に足利義満の天皇家略奪の事が記述されている。
これも都合よく病死している。
死んでいなかったらどうなっていたか興味はある。
面白い本と思う!
実際の時代と、南北朝の事がよく分かる。
読み返して良かったと思う!
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